プロローグ:気づかぬうちに始まっていた転機
最初は、ただ「腰痛かな」と言っていた夫。
電車での移動や駅の階段や、いつもの通勤ルートでも「なんだかふらつく」と口にするようになっていました。
病院に行っても「腰痛でしょう」と言われるばかりで、症状は良くならず。私はただ、不安だけが日に日に募っていきました。
夫自身、精神的に悩んでいたようでした。当時は今のように心療内科が身近ではなく、精神的な不調を相談できる場所も限られていました。「精神科に行くのは特別なこと」ーーそんなふうに思われがちな時代でした。
そんな中で彼は少しずつ心を閉ざしていき、私は「いつかこの人が電車に飛び込んでしまうんじゃないか」という恐怖と、毎日向き合っていました。
「今、この人がふっといなくなってしまったら」そんな最悪の想像が頭をよぎってしまうのです。
何もできないまま、ただそばにいる日々が続きました。当時は、テレビで自殺のニュースが流れるたびに、心臓がぎゅっと掴まれるような感覚に襲われていました。
「もしかして…うちの人ではないか」名前が出るわけでもないのに、そんなふうに思ってしまう自分自身にも苦しさを。
気づかれないように、でも、心の中でいつも怯えていたのです。
しかもその頃は、子どもがまだ小さくて。私の不安定な気持ちが、そのまま子供にも伝わってしまうような気がして、「強くならなきゃ」「平気なふりしなきゃ」と、無理を重ねていたのを覚えています。
心の中の本音
強くならなきゃと思っていたけど、本当は毎日「逃げたい」「助けてって言いたい」って心の中で叫んでた。でも、誰にも言えなかった。
その時支えになったこと
そんな毎日の中でも、子どもが無邪気に笑う姿にだけは救われていた。
誰にも言えなかった日々
あの頃の私は、毎日がいっぱいいっぱいで、自分の心の居場所なんてどこにもなかった。今思うと、会社に行く時間が、唯一の”逃げ場”だったのかもしれない。
あの頃は誰にも言えなかったこと。でも今、ようやくこうして言葉にできるようになった。今、もし心の中で揺れている誰かがいたらーー。この言葉がそっと寄り添えたら、嬉しく思います。
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